「追想五断章」米澤穂信。

追想五断章

父が死に学費が払えず大学を休学中の主人公菅生芳光。古書店を営む伯父の家に居候し、店番をしている。復学できる見通しもない。
ある日、松本から来た北里可南子に、可南子の父親が生前書いたらしい５つの掌編を探して欲しいと頼まれた。その作品はすべてリドルストーリーであり、可南子の手元には結末の一文のメモだけが残されているという。可南子の父親の過去に何があったのか？

結末を読者に委ねるリドルストーリーだけど実は結末が用意されていて、それを読むことによってイメージが一転する、という手法を謎解きに使うというやり方が素敵でした。作中小説５つも面白くお得感。
終始ドヨドヨした空気が漂い、結局救いがない苦い結末は、米澤さんらしさが感じられ私好み。最後まで読んでから序章を読み返したときに味わった絶望はなかなかなもので、真実は知らないほうがいいこともあるな、としみじみ痛感いたしました。