「茗荷谷の猫」木内昇。

茗荷谷の猫

茗荷谷の猫

江戸末期から昭和の時代まで、東京の地を舞台にした短編集。新種の桜を作った人、効能のある黒焼きを追求した人、映画監督を目指した人、静かな隠遁生活を求めた人…後に報われたり、まったく報われなかったり、ままならない人生の数々。
歴史に名を残すこともなく、しかしそれなりに懸命に生きた人たちの話が繋がって、今に至る…そうやって人の世が続いていくのだな、と思うと寂寥感もあるけれども人のさだめとはそんなものなのかもしれないね。
4つ目の話『仲之町の大入道』は内田百輭がモデルと思しき人が登場するんだけど、『冥途』は読んだことがなくっていささか残念。