「コトリトマラズ」栗田有記。

コトリトマラズ

コトリトマラズ

社長と不倫しているデザイナーの華。社長の奥さんは同じ職場で専務。有能でよく気がつき社員みんなから慕われている。ある日、その奥さんが病に倒れ…。


不倫小説。私は不倫完全否定派ですが(どうしても不倫したい人は、不倫する前に配偶者と話し合いをするのが筋なのでは?)、この小説は面白かったです。
奥さんが病で倒れる前、華は社長との関係が「二人で完結した世界」と考え満足していたのに、なかなか会えない時間を過ごすうちに変わっていくのです。その過程が延々と描かれるだけの小説で、そもそも不毛な不倫についての思考だから、ただただ不毛なだけに終わりそうなものを、華の成長物語として立派なものにしているから不思議。華のフェアになろうとする態度に共感できました。
大病して療養を余儀なくされた奥さんも、様々な葛藤を経てどうやら考えがまとまった様子、とても誠意が感じられました。
しかし社長は…どうなんでしょう?なぜかとても好人物のふうに描写されているけど、二人の女性を両方愛しているというのは…アリ?私は納得はできないよ。奥さんとは当たり前だけど結婚していて、不倫の事を知らせていなかったわけだから、とてもフェアとは言えないし。ま、男の好みは人それぞれっすね。そういう男でも好き、って言うんだからしょうがない。
同僚で友達のカヨのセリフがとても良かったです。ここに全てが集約されていた気がしました。潔くって爽快なお母さんも愛すべき人物でした。