「ポプラの秋」湯本香樹実。

ねるよりらくは、なかりけり。うきよのばかは、おきてはたらく
ポプラの秋 (新潮文庫)湯本香樹実「ポプラの秋」追加。もう冒頭からウルウルモード。子供の話にはホント弱い。交通事故で死んだお父さんの存在を、自分の中でもてあまし、精神バランスを壊しかけの小学一年生の主人公千秋に、大家のおばあさんが「自分が死んだら届けてあげる」と言ってお父さんに手紙を書くことを勧める。
(ネタばれ注意!)
本来ならお母さんがもっと娘の力になってあげればよいところなのに、なかなか自身がショックから立ち直れず、娘の気持ちを和らげることもできない。最後にわかることなのだが、実はお父さんは飛び降り自殺で、自分も後悔に苛まれ傷ついていた、というところがポイント。お母さんもおばあさんの前で涙を流し、お父さんに手紙を託すんだぁ(; ;)。生きるのに余裕が無いとき、こんな風に他人の誰かに助けてもらうってこと、大事じゃないか。でも今の世の中、なかなかできないんだよね。

書店のレヴュー

18年前大家のおばあさんと交わした約束、死んだお父さんに手紙を渡してくれること、私が大人になるまで生きていてくれること。そのおばあさんが亡くなり、主人公の千秋は18年ぶりにポプラ荘を訪れた・・・。◆「夏の庭」の著者が書いた作品。これもテーマは「死」だ。近しい人の死の悲しみをどんな風に飲み下していったらよいのか。父親を失ったばかりで混乱する小学一年生の千秋を大家のおばあさんがそっと手助けしてくれる。全く他人の老人が子供たちを諭したり見守ったりすること自体、今の世の中では困難。こんな触れ合いがあれば、もっと人は穏やかな気持ちで生きられるのに。★★★