「西日の町」湯本香樹実。

西日の町湯本香樹実「西日の町」追加しました。「夏の庭」と「ポプラの秋」は、おじいさん・おばあさんは「他人」だったのに対して、「西日の町」に登場する“てこじい”は血のつながりのある身内。其の辺の微妙な雰囲気が前の2作になかった複雑さを生むため、簡単に泣けない。子供が主人公でも、子供向けではない所以かもね。
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カナタも確かに幼い頃は、父親はスーパーマン的存在であった。・・・今は只の頑固な爺。それでも別に幻滅したりはしてないよ〜ん。感謝しております。

書店のレヴュー

北九州の西日の当たるアパートに母と二人で暮らす小学生の主人公和志。そこに母の父である“てこじい”がある日突然やってきた。◆この“てこじい”が個性的。若い時から様々な商売をし、突然行方をくらましたり、香典を抜き取っていったりとかなりの放蕩オヤジ。そんなてこじいも年老いて、母幸子のもとを頼って同居を始める。そんな父親を恨んでか時に邪険に扱ったりするものの、どこかでとうに許していて又信じていたりする母。自由奔放な祖父の生き方にに憧れる和志。そんな父娘の葛藤と祖父・孫の短い出会いの微笑ましさなど、西日の中で鮮やかに描かれた作品。第126回芥川賞候補作。★★★