ウォーターランド (新潮クレスト・ブックス)グレアム・スウィフト「ウォーターランド」。
長いお話でした。520ページあまり。
最近の日本の小説界は、純文学と大衆小説の境界が曖昧になったといわれているけれど、それって結局全ての大衆化じゃないの?と思っておりました。ま、読みやすく面白ければそれでよし、なんだけれどね。でも、後世に残るような作品ってあるのかしら?むむむ。
ところで、とりあえず文学は、海外物を読めばいい、と、この本を読んで気付いた。
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フェンズと呼ばれる河が全てを支配する土地を、干拓と運河で征服し、水運とビール醸造で栄えた街。そこで生まれたディックとトムの兄弟とメアリ。きっかけはメアリの好奇心のように見えて、実は何世代にもわたる因果があった、というお話。
この本が書かれたのは1983年。主人公トムの教え子であるプライス君(トムに反抗し、歴史を学ぶ意味について、しぶとく食い下がってくる愛すべき少年。ホロコーストクラブ所属。)は、しきりに歴史の終焉を叫び、世界の終わり(主に核戦争)に恐怖している。そういう時代だったのか。冷戦が終わった今でも、現在の世界状況を嘆き、未来を悲観して子供を作らない人っている(らしい、聞いた話)。が、世紀末が終わっても、核戦争は起こってないし、恐怖の大王は降ってこないし、相変わらず世界は続いていて、今までの暮らしを人は繰り返している。歴史を学ぶのは、過去の過ちを繰り返さないため、といっている本ではないのだけれど。
子供たちが、親がしてきた事を繰り返さず、抵抗して少しでも進歩しますように。

書店のレヴュー

妻が引き起こした嬰児誘拐事件により失職を宣告されている高校歴史教師。生徒の「歴史は終焉に向かっており、歴史を学ぶよりも『いま・ここ』が大切である。」という発言に触発され、自分の一族にまつわる物語を語り始める。◆舞台はイギリスのフェンズ(沼沢地帯)である。教師の「いま・ここ」に至るまでの経緯を何世代も遡り子供たちに話し聞かせる。それは未来に希望をつなぐものでは決してなかった。一族の発展と没落、近親相姦、精神遅滞、殺人、堕胎。◆人が「なぜ」という欲望を捨てない限り、歴史は語り継がれていく運命にある。革命や戦争といった歴史の表舞台に立たなかった人々にもまた歴史があり、連綿と現在まで連なり因果応報があるのだから。これはまさに大河小説といえる作品。05/09/19★★★★