バケツ

バケツ

あまりにも優しすぎる主人公ではありますが、ずいぶんホッとさせられました。最初はバケツ君にちょっと知的障害がある、というので、それ関係の話かと思ったらそうではありませんでしたね。というか、途中から彼の知的な遅れなんて忘れてしまいましたが。
実際そういうふうに人間を区別(社会では、ひいては差別となる)すること自体が作者の考えにないのかもしれないな。
準主役のバケツ君、冒頭では中学3年生だったのに、ラストでは20歳に。何も出来なかった彼が、独り立ちしようとしているその成長ぶりは感慨深かった。「母」の気分だわね。
rokuさんのお店にあった本です。とても面白かった。ありがとう。

書店のレヴュー

体罰が横行する養護施設に嫌気がさし退職した神島は、その施設の生徒だった知的障害のある少年の通称「バケツ」と共同生活を始める。◆主人公の神島は気が弱く、いつもおなかの調子が悪い。しかし読み進めば進むほど、彼がちっとも気が弱くないことに気づかされた。彼は限りなく優しいのだ。「本当の優しさ」なんて表現では軽々しいほどの優しさなのだ。◆虐待児童や夫による暴力から逃れる妻など社会的弱者といわれる人々を救うための福祉は以前より整ってきているのだろう。それでも杓子定規な制度では救われない人々が少なからずいることを提言しているのではないか。05/12/14★★★