ウェルカム・ホーム!

ウェルカム・ホーム!

鷺沢萠さんの作品は初読み。
この本はどこかで良い評価を目にし読みたい本リストに入れていたのだけれど、鷺沢さんがこの世を去る直前に出版された本だったので、なんとなく陰鬱な感じの話かな、と勝手に思っていたし、いつも利用している図書館に置いてなかったこともあり、今まで読まずにいた物。
で、読んでみて、とっても面いかった。
渡辺毅のウェルカムホーム」
人生に失敗して友人の家に転がり込んだ毅のお話。友人英弘は男の子が一人いて妻と死別、子どもを抱えて途方に暮れていたところ。レストランの調理人だった毅は家事全般を引き受け居候、英弘の息子である憲弘を育てることに。
「主夫」毅の男の沽券にまつわる葛藤の数日間のストーリーなんだけれど、ほとんどが毅の独り言であり、その思い込みのずれ具合がひどく面白かった。
男3人と毅の恋人の絵里子も加わって幸せな団欒を過ごす彼らは、家族の正しい形とは一体何?と問いかけてくる様。

書店のレヴュー

「フツーの家族」ってなんだろう?◆この本に収録されている中篇2作に共通なのは「血のつながりがない親子」であること。しかもちょっと複雑で傍目から見るとまさしく「フツーでない」。でもこの2つの家族は「血のつながり」に頼らずとも深い絆で結ばれている。家族にとって必要なことが何かわかる作品。◆特に一つ目の「渡辺毅の〜」がよかった。泣けるシーンが沢山あるのに何故かそれ以上に笑える場面多し。「男の沽券」というのは厄介なんだな。05/12/21★★★