ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

ある秘密 (新潮クレスト・ブックス)

第二次大戦、傀儡政権下にあったフランスでの、ある男女の悲劇的出来事。作者の自伝的作品だそうです。
あの迫害がなければ誰もが幸せだったかもしれない、でも同時に自分の存在もなかった、そのどうしようもないやりきれなさから、少年は多くを学び成長していくのだった。感動というのとは違う、痛切に心に残った作品。

書店のレヴュー

父さんと母さんは何か隠してる・・・。◆スポーツマンの父とスポーツウーマンの母の子として生まれた主人公は、ひとりっこで病弱。美しい筋肉を受け継がなかったことに引け目を感じ、強靭な肉体と精神を持った兄を想像し、空想に浸る日々を送るようになった。それを見守る両親の困惑を僅かに感じながら。◆15歳になった主人公は、知らず知らずのうちに両親の「ある秘密」に近づいてしまい、隣人のルイーズから打ち明けられることに。自分が秘密を知ってしまったことを愛情を持って両親には隠し、又秘密を共有することによって脆弱な精神が逞しく成長していくのだった。◆ホロ・コーストの話である。が、それは歴史上の出来事であり、それを体験した者たちにとっては、極めて個人的な出来事として記憶されているのだ。シンプルで短くはあっても、言葉を無くすほど切ない作品。06/02/17★★★★★