荻原浩「ママの狙撃銃」。

ママの狙撃銃

ママの狙撃銃

主婦が主役のハードボイルド。面白かったんですけど、結末がね・・・。


祖父から暗殺者の血を引き継ぎ、アメリカ・オクラホマで過ごした少女時代に仕込まれた暗殺者としての心得。日本へ戻り、その過去をひた隠しにしていたのにもかかわらず、25年ぶりの依頼の電話が来てしまう・・・


大根や葱に銃を隠したり、リビングに高枝切りバサミ、寝室にはゴルフクラブ、と、常日頃からさりげなく武器を配置しておくことを怠らない、とか。暗殺計画をしながらも、スーパーのお買い物や夕飯の支度に精を出したりと、この辺は大変コミカルでよかった。
学校でいじめられている娘の問題に乗り出すところも、「危険」だけれど面白い。


でも結局、非情になりきれない曜子は・・・。
・・・ま、当たり前の感覚ですが。
そんなわけで、結末が、とても暗くて、悲しい。どんなことがあっても人は殺してはいけないのだ、と倫理観を振りかざしてしまっては、気持ちよくハードボイルドは読めない気がする。
いっそのこと、殺される人を極悪人にして、家族の愛をテーマにすればよかったのに、と思ってしまいましたよ。

ただのコメディーじゃない、ってことで、これでいいんだろうな〜作者的には。

書店のレヴュー

夫と子ども2人。極々普通の専業主婦福田曜子41歳。彼女には誰にもいえない過去があった。◆憧れのマイホームを手に入れ1年半、ささやかなガーデニングを日々の楽しみにしていた曜子にかかってきた不吉な電話。曜子の過去を知るKからの仕事の以来だった。◆帯の文句にあるそうですが、「奥様はスナイパーだった」というお話。家のローンと、娘の学費、家族の幸せを守るために、25年ぶりに仕事を引き受けた曜子の,完璧な仕事ぶりがカッコイイ。娘をいじめる生意気な同級生をガツンとやるエピソードも爽快。何せ主婦がスナイパーですから、どこかコミカル。問題は、暗殺される側が、殺されても致し方ない程悪い奴じゃないところか。その歪みを埋めるためか、結末は暗く、後味が悪いのがちょっと。06/06/01 ★★★