高瀬ちひろ「踊るナマズ」。

踊るナマズ

踊るナマズ

ナマズが、ぬるぬる、です。
ちょっと読みづらい文章は、新人さんだからか。
主人公(語り手)弥生の14歳当時の思い出を、胎児に語る、という趣向です。
ナマズのヌルヌル話も、ユニークで、ちょっと哀れで、でもハッピーエンドで、かなり面白い。
それを話して聞かせる「ナマズの番人」水口さんも、ちょっといい感じな御仁。
弥生のおば、画家の小夜子さんの飄々とした生き方が素敵。
弥生の同級生、一真君、読んでる私も心ときめきました。


一緒に収録されている「上海テレイド」。
こちらは、もっと大人にエロチックなお話。姉と弟の禁断の恋のお話。
万華鏡が、神秘的に美しく感じられました。筒の中に何かが入っていて模様が移り変わる万華鏡と違って、テレイドスコープは、外の景色がそのまま模様になるタイプ。
「汚いものでも、きれいな光景になる。」
あれは確かに恋だった、と姉が気付いた時には、弟は行方知れずに。ちょっと寂しいお話でしたね。

書店のレヴュー

ナマズが町のシンボルとなっている田多間町。夏休みの宿題で、郷土について調べることになった弥生と一真。よく知られたナマズ伝説の他に、隠された話があることを知る。◆「踊るナマズ」主人公弥生が、もう直ぐ生まれてくる胎児に向かって、ナマズにまつわる話を語る形式で、それは、自分の生い立ちやルーツの説明であると同時に、わが子の無事な誕生を祈る意味も込められている。このナマズの話が実にエロチックで、女の子から女へと変わっていくその瞬間の通過儀式として、人々に語り継がれてきた伝説らしい。思春期のドキドキする感じが、甘酸っぱくてとても良かった。第29回すばる文学賞受賞作品。◆「上海テレイド」万華鏡作家が万華鏡を作り始めたきっかけを打ち明ける。姉弟の禁断の恋。こちらも静かにエロチック。06/08/03★★★