天童荒太「包帯クラブ」。

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)

天童荒太さんの本は、今まで読んだことがないのです。
有名な「家族狩り」とか「永遠の仔」から想像するに、重苦しいお話が得意な人なんだろうか?
で、この「包帯クラブ」ですけど、何といいますか、非常に良い話です、、、が良すぎるといいますか。
心が傷ついた、そのときの場所に包帯を巻き、傷を癒すことを、活動内容とする「包帯クラブ」。
「あなたは傷ついているんだよ」「傷ついたら泣いてもいいんだよ」
包帯が巻かれた風景は、傷ついた人の心を優しく包み込むよう。
問題は多様で、さっと挙げるだけでも、家の貧しさ、同性愛、進学問題、痴漢被害、わいせつ教師etc.
壁に突き当たったり、挫折したりしながら、最後に仲違いした親友の心を癒す。


クラブ員の10年ぐらい後の近況報告が、合間に挟み込まれるんですけど、これがまた、立派(すぎ)。きちんと自分たちの活動の主張を貫き、立派に生きている。素晴らしいです。



ちくまプリマー新書」は、YA向けらしいですね。他のラインナップをみると、実用書っぽいのが多い。
思うに、この作品は、青少年に「生き方」を問うのが趣旨なのかな〜と考えると、妙に納得してみたり。
実際は、なかなか人の傷を癒すのは難しいし、自分たちの考え方を将来に渡って貫くのは簡単ではない。
それでも、こんな考え方はどうだろう、と読者に呼びかけるのならば、これは良い本なのかな、と思いました。
筑摩書房」のHPに、その名も「包帯クラブ」があって、本に書かれていないメンバーの近況や、過去の話なんかが読めます。本を読んだ人なら、これも面白く読めるはず。

書店のレヴュー

人は純粋なままではいられない。汚いものを見ずには大人になれない。そうして次第に大事なものが失われ、知らず知らずのうちに、奪う側に回っている。多くの傷ついた少年少女たちは、心の奥底に傷を抱えたままおびえている。それに気付いた主人公たちは、戦わないかたちで自分たちの大事なものを守ることにした。それが「包帯クラブ」だ。その傷を受けた場所に、白い包帯を巻く。自分が傷ついていることを知り、それを癒すために。◆ここに登場する少年少女たちは、とても優しくて傷つきやすい子ばかりだ。彼らは、自分たちの甘さや、どうにもできないことがあることも知ってなお、自分たちのできることをやろうとする意欲を失わない。生きづらさを感じている若い人たちにオススメの一冊。06/08/16★★★