京極夏彦「邪魅の雫」。

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

京極さんの本は、「陰摩羅鬼の瑕」を読んだのが最初で、なんだかひどく衝撃を受けてしまって、シリーズ制覇を誓うも、「姑獲鳥の夏」を読んだだけで滞っている私です。何せ、厚すぎ。簡単には手を出しづらいよ。
てなわけで、「邪魅の雫」で3作目、という私でも十分楽しめました。作中「あの事件」とか「箱根」とか出てきてもわからないんですけど、流して支障はありませんでしたね。
とにかく人が多すぎで混乱したし(メモ取りたくなったぐらい)、人間関係も複雑怪奇ですが、それも最後には「不思議なことは何もない」と言って中禅寺が整理してくれるので安心ですね。ハハハ。


薀蓄が少なかったのと、榎木津が割と静か目だったのが残念な気もするけど、それ以外は、いつものように(てったって3冊目ですが)楽しめました。よかったよかった。

書店のレヴュー

次々と破談になる榎木津の縁談話について調べることになった益田。一方、江戸川・大磯・平塚で連続毒殺事件が発生する。次々と殺されていく人々と多くの登場人物の心理。事件は錯綜し、あの人が登場。妖怪シリーズ最新作。◆そういえば、妖怪についての薀蓄がありませんでしたね。そもそも榎木津・中禅寺の登場は少なめ。注目は、榎木津の過去の女性関係について明かされるところでしょうか。今回の大活躍は、益田・青木(と関口)で、彼らの心情の描写が面白かったですね。さて肝心の謎解きですが、読者には被害者・加害者の動きがわかっているので、途中で筋がわかってしまわないでもないのですが、やはり最後の中禅寺の口上は鮮やかですし、事件の結末は切なく、人はみなバカオロカであるのだな、と思い知らされました。2段組P800強と持つのも大変なほどの厚みは思っていたほど時間はかからず読まされました。さすが京極堂。06/10/12