「安徳天皇漂海記」宇月原晴明。

安徳天皇漂海記

安徳天皇漂海記

タイトルから明らかに歴史物だからして、普通は、こういうのは鼻っから目に入らない事になってるんだけど。
でも直木賞候補になったし、ちょっと心の隅に引っかかっていたらしい。
で、図書館にたまたまあったし、他に目ぼしいものもなかったので、挫折覚悟で借りたのでした。
ところが予想に反して、面白く読めましたよ。
な〜んだ、結構歴史物も読めるじゃありませんか。
ま、物にも寄りけりかもしれないけどね。
というのも、作者の宇月原さんは、日本ファンタジーノベル大賞の出でいらっしゃって、私はこの賞とは相性がいいからかしら。
さて、本作品は、壇ノ浦で死んだはずの安徳天皇が、実は死んでいなかった(?)という話。いや、厳密には死んでるんだろうけど。
昔、天照大神邇邇芸命の体を包んだという神器「真床追衾」に包まれて、まるで琥珀の玉に閉じ込められているかのような姿になって現れる、、、と、真にファンタジーなのです。
訳もわからぬまま帝になり、そして死んでいった少年の心は、ずっと悲しみに囚われたまま。
その御霊を鎮めんがために、源実朝が、マルコ・ポーロが苦心し、そして幼帝は天竺へ辿り着く…


私は歴史の事にはとんと疎いし、挿入される和歌や文献の引用もチンプンカンプンだったりしましたが、かなり楽しめました。よかった。
これからは、タイトルだけで食わず嫌いしないようにしよう、と思いましたわ。

書店のレヴュー

壇ノ浦で入水した幼帝安徳天皇。わずか八歳で無念のまま海の底に沈んだ少年の心は鎮まらず、その身は琥珀の玉の内に封じられたまま放浪した。やがて辿り着いたのは…◆史実では8歳で入水した安徳天皇が、実は真床追衾(まとこおうふすま)という神器に守られ漂い、人々を魅入らせていく、という奇想天外で幻想的な歴史小説です。第一部は源実朝の小姓が語り手、第二部は滅亡しつつある南宋を舞台にマルコ・ポーロが主人公。歴史に新しい解釈を加え、盛者必衰の悲哀を込めたストーリーは静かで儚く、哀しみを湛えたままの安徳天皇が漂う様が大変美しく感じられました。歴史が苦手な私でも読めましたよ。06/11/22★★★★