「ひかりをすくう」橋本紡。

ひかりをすくう

ひかりをすくう

働きすぎて疲れた智子が、仕事をやめてちょっぴり田舎に引越し、のんびり過ごすうちに心が癒されていく、、、というお話。
家事一切を請け負ってくれる同居人の男の子哲が作る料理がやたらとおいしそうなんだ。そうやっておいしい物を食べながら、不登校の女子中学生に英語を教えたり、子猫を育てたり、、、とほのぼのした暮らしが続くのです。これは羨ましい。
好きな仕事をやりすぎてしまうこと、パニック障害、実父と相容れないこと、と合間に思いで語りが挿入され、何が自分を追い詰めたのか気付いていく。
と、哲の前妻が突然訪ねてきて…


仕事の能力を認められ、辞めてもいつか戻ってきて欲しいと言われる。貯金はあるようだし、後に遺産も入って、当面金銭的には不自由がない。何より哲が一緒にいてくれる。それもこれも、智子さんが積み上げてきたものの成果なんだよね。ゆっくり休むのも悪くない。
ま、実際はこんなに恵まれた人は少ないと思うけどね。とかいってしまうと雰囲気台無し。
哲の別れた奥さんが、ホントいやな女で、この女と会うところがちょっと修羅場っぽいんだ。その後、この女が持ってきた哲のCDを腹たって川に捨ててしまうんだけども、それを拾いに行く場面が笑えて、且つ印象的です。
そう、みっともなくても、情けなくとも、それが人生なんだね。

書店のレヴュー

智子は高く評価されていたグラフィックデザイナーだった。評価されるほど又がんばってしまう生活を続けているうちにパニック障害になってしまい、疲れ果てたすえ、仕事をやめ、一緒に住んでいた哲と共に田舎暮らしを始める。◆知らず知らず自分で自分を追い詰めてしまうのは良くある事かもしれない。立ち止まらず突っ走れる人もいるだろう。でも、もし疲れているのなら、この本はオススメ。空が広い郊外で穏やかに暮らす日々と智子が歩んできた道の回想の対比が面白い。このあと二人がどうなったのかは、読み手の想像次第だけれど、きっとずっと立ち止まったままではないだろうな〜と思った。06/12/28★★★★