「ささらさや」加納朋子。

ささらさや (幻冬舎文庫)

ささらさや (幻冬舎文庫)

前回「ガラスの麒麟」で打ちのめされちゃった私ですが、今回も割と打ちのめされました。これはもう、加納さんが肌に合っている証拠でしょう。
愛する夫を失ってすっかり弱っているサヤの前に、さらに追い討ちをかけるような人々が登場する展開で、危機に際しては死んだ夫が現れて助けてくれる大変ハートウォーミングなお話。
サヤを動揺させる悪い人たちだけど、なぜか私は憎めないんですよ。忘れ形見を渡せ、と無理矢理迫る夫の親族でさえも。誰もがただ人間らしいだけじゃないですか。と言うと私って人間に期待してないみたいです、おそらくそうです。
で、私なら当然文句言いまくりで相手と同レベルに位置する。
でもサヤは言わない。サヤはこの後も誰も恨んだりはしないのだろう、と思うわけで。サヤって実は大変強い人で、それが人を惹きつけるのだな。

書店のレヴュー

突然の事故で夫を失い、まだ首もすわらないユウ坊と2人世間に放り出されたサヤ。気弱で頼りないサヤを守るため、死んだ夫は…。心温まる短編連作集。◆出産を終えて間もなく愛する人をあっけなく失ってしまったサヤ。それだけでも痛ましいのに、そこにつけ込むように悪意を持った人が次々とサヤの前に現れるのです。でもそんな危機の時には死んだ夫が他人の姿を借りて「馬鹿っサヤ」と救ってくれる…。◆悪意でなくとも、ずるかったり弱い部分を持った人、主観的な考え方しかできない人が次々現れる。そんな人間の描き方が本当に加納さんは上手だ。気弱なサヤは、そういう人たちから逃げたり許したりするばかりだけれど傷ついたりはしない強さを実は持っている人ではないかと思う。幽霊の夫にお人好しと言われても「でも悪い人じゃないのよ」。切ないけれどいい気持ちにさせられる、そんなお話でした。07/07/23★★★★



「ガラスの麒麟」のこと。
あれのどの辺に地雷があったのか。麻衣子が死にたがっていて殺された事に尽きると思うのですが、もっと突き詰めると、儚く脆い女子高生が美しく見えてしまった事。これに非常に罪悪感。
人は、みっともなくてもずるくとも生きていてこそ花、と思いたい。