「キサトア」小路幸也。

キサトア

キサトア

理論社だし図書館でも児童書コーナーにあったので、コレは児童書の区分になるのか。でも大人も読めるいい作品です。


お父さんのフウガさんは「風のエキスパート」。風を読んで、暮らしにとって一番よくなるように調整するのがお仕事。
アーチは6年生。後天的な病気で色がわからない。でも立派な賞を受賞した事もある有名なアーチスト。
双子の妹キサとトアは1年生。
キサは、日の出とともに目覚め、日の入りとともに眠る。
トアは、日の入りとともに目覚め、日の出とともに眠る。
…という症状の病気のため、兄妹3人で遊ぶことができないし、夜中誰かがトアのために起きて相手をしなければならない。


と、なかなか大変そうな一家ですが、あまり大変そうに見えない。病気も特別に思える才能も、何もかも自然なのです。
そんな風に平和に暮らしていたある時。漁獲量が減ったのはフウガさんのせいではないか、と言い出した人がいて、一家を取り巻く環境が微妙に変化していくのですが…。


作品の雰囲気は、いしいしんじさんのそれに似ている。
どこでもない国のどこでもない町で、基本的に住人はみな良い人。
でも時には辛い出来事もある。
それを自分たちで考え、正直な気持ちで乗り切って生きる子どもたちの強さが、気持ち良いのです。

書店のレヴュー

6年生のアーチは色がわからない持病があるけれど、有名なアーチスト。双子の妹キサとトアは、キサが日の出から日の入りまでしか起きていることができず、トアはその逆。お父さんのフウガは「風のエキスパート」。海に三角に突き出た町は、同じ場所にいながら日の出も日の入りも見る事ができる。町の人みんなに愛され幸せに暮らしていた一家に、ある日問題が降りかかって…。◆架空の世界が舞台。大人の事情でざわつく事もあるけれど、正直にまっすぐ生きる子どもたちと、周囲の大人たちの揺らぎない態度が清々しく、心安らぐお話です。母が死んでアーチは家のことや妹たちの面倒、学校や友達づきあい、そして芸術活動と毎日色々こなしている。それを「忙しくて大変」と思うのは他人の視点で、本人はいたって平気。「帆に風を受けて船が進むように」。自然と共に自然に生きるってすばらしい。07/07/27★★★★★