「秋の牢獄」恒川光太郎。

秋の牢獄

秋の牢獄

「夜市」「雷の季節の終わりに」に続く恒川さんの3作目。これもすごかった。
異界のドアを開けてしまった一般人が、その不思議な世界に囚われてしまう短編が3つ。
『秋の牢獄』は、女子大生の藍が11月7日に閉じ込められてしまう、というもの。朝、目覚めると毎日同じ「11月7日」なのだ。グリムウッド「リプレイ」の1日版か。
『神家没落』は、見える人にしか見えない放浪する『家』に閉じ込められる話。
『幻は夜に成長する』は、幻を操る祖母と暮らすリオが、やがて自分の能力に目覚めたために宗教団体によって幽閉されてしまう話。
どの主人公も、初めは理不尽に閉じ込められ戸惑うのだが、次第に心理状況が変化していく。その描写は圧倒的な説得力で、自分も牢獄を受け入れてしまったかのように錯覚してしまった。なんだろうね、この不思議な感覚は。
★★★★