「玻璃の天」北村薫。

玻璃の天

玻璃の天

「街の灯」の続編。2007年上半期第137回直木賞候補作。
時は昭和8年、社長令嬢の花村英子が主人公のミステリー。前作に引き続きベッキーさんこと別宮さんも健在。身の回りで起きた事件を解決していくストーリが3つ。
きらびやかな上流社会が夢のように描かれていた前作から、さほど時がたっているわけでもないのに、情勢は確実に大戦への道を進んでいることがわかって辛い。英子やご学友の方々は近い将来悲惨な目にあうのだろう、そんな予感。
ベッキーさんの隠された過去も判明して一層辛かった。
北村さんがこの時代背景を選んだのは、やはり反戦の気持ちを込めるためなんだろう。英子がただの世間知らずなお嬢様で留まることを良しとせず自分の意思を持って世の中を見据えようとしている姿勢でもって表現している。でも特権階級の枠組みから逸脱するまでは至らないのが歯がゆい。この時代の女学生にはこれが限界で、まあ、仕方のないことなんだろう。読み手が諸々汲み取ればいいことだし。
で、続編もあるのかな。期待してます。