「永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢」重松清。

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢

重松さんの作品を全部読んだわけじゃないが、これはかなりの異色作品でありましょう。まえがきで、大変苦労したとご本人も語っておられます。
ゲームの「ロストオデッセイ」のことは、なーんも知らないけど、想像するに、コレクションアイテムか何かなのかな〜主人公カイムの夢の中のストーリーだそうで、全部で31話。カイムは1000年も生き続けている、死ぬことができない男。彼の長い人生の一瞬を切り取った31場面、といえるのでしょう。
永遠に生き続けるカイムと対照に、他の人間は当然のようにドンドン死んでいきます。
人生には限りがあるから生きているときが美しい。
人は弱いから優しくなれる。
人の営みをずっと見守り続けることを余儀なくされ苦悩するカイムの存在意義について考えさせられました。それもこれもゲーム中でわかることがあるかもしれないね。だからといってXbox買おうとは思わんけど。
ゲームしなくともこれ一冊で充分楽しめるし、ゲームするんだったら、むしろ本は読まない方がいいんじゃないのかな、と思います。
印象に残ったのをあげておくと、
「英雄」
 武勲をあげた将軍は、故郷の村で英雄に奉られた。が、幼い子どもが、子牛の誕生を喜んだり祖母の死を悼んだりする話を聞き、引退を決意する。
「弱き者からの手紙」
古い掟に縛られた村の旧家の息子は、異国の女性と結婚した。が、村人は彼女をよそ者扱いし、男は彼女を守りきれなかった…。


どんな設定であっても、どれも重松さんの作品であることは間違いない、ってことで。