「九つの、物語」橋本紡。

九つの、物語

九つの、物語

これは、橋本作品の中で最高傑作かと。実によいお話でした。
泉鏡花太宰治などの文学作品にからめた9つの話は、兄と妹のまったりとした生活を描くところから始まる。
女の子にもてて、かっこよくって、いい加減で、読書家で、料理好きな兄の禎文と、真面目で融通が利かなくって曖昧な事が嫌いな妹のゆきな。二人は兄が作った美味しい料理を食べ、本の感想を語り合い、のんびりと暮らしている。
でも。実は隠された真実があり、次第に明らかになっていく……。


ぅぅ、優しい。優しいな。第八話の兄の科白が心にしみたよ。こんな風に見守ってくれる人がいるのは素敵だ。辛いこと苦しいことがあっても笑って生きられるように、平凡に幸せに暮らせるように、いつもいつも願っていてくれる人がいて、ゆきなはなんて幸せなんだろう。


使われている文学作品は、読んでなくっても大丈夫だった。ちなみに私は山椒魚しか読んでない(汗)。これをきっかけに読んでみたりするのがいいのかもしれない。
最後第九話のサリンジャーコネチカットのひょこひょこおじさん」は、読んでみたいな〜この本のタイトル「九つの、物語」はここから取っているんだろうし、特別思い入れがあるのかもしれないね。