「福袋」角田光代。

福袋

福袋

短編が8つ。どれも、いかにも角田光代の小説、といった感じのするものだった。
どの話の主人公たちもちょっと冴えなくて、ある日物を拾ったり、押し付けられたり、開けて見ちゃったり、と、全体の統一感がある短編集になっている。
以下、あらすじと一言メモ。
「箱おばさん」は、洋菓子店の店員葛原が、客のおばさんに「ダンボール箱を預かって」と無理矢理頼まれる話。なかなか引取りに来ない叔母さんにイライラ、中身のわからない箱にソワソワ。こんな箱ごときに翻弄されてしまうのがいい人なのかも。
イギー・ポップを聞いていますか」、家の前に捨てられていた紙袋を持ち帰って開けてみた主人公。中身は…おっと明かさないでおきますか。この夫婦のこの先が気になる。
「白っていうより銀」は離婚届を出した帰りの駅のホームで、若い母親から「赤ん坊を預かって」と頼まれる話。これが一番のお気に入りかな。この夫婦は大人じゃなかったってことかも。目の前の問題から逃げちゃいかん。
「フシギちゃん」はちとイタい。彼氏が見知らぬ相手とメール交換しているのが気になって気になってしかたのない主人公が、同僚の女性からストーカー経験の打ち明け話を聞く話。知りたいという欲求の果てしなさといったら。
「母の遺言」は、母親の残した封筒を前にして、それぞれの思惑に耽る4人兄妹の話。実際出てきたものはアレだが(あ然とする物ッス。)、4人4様で物の見方が違っていて面白かった。やっぱ、兄ちゃんに金やっちゃダメだと思うよ。
「カリソメ」は、女をつくって出て行った夫の代わりに同窓会に出席する妻の話。この夫はサイテーなんだが、気持ちわからなくもない。思い通りにいかない人生、今の自分は借りの姿だと思いたいのは山々。
「犬」、これもちと怖い。同棲中の彼女が迷い犬に並々ならぬ執着心を発揮、それに恐怖する彼。こんな一面もあることを知ってなお、一緒に住み続けるなんて、許容範囲なのか?よくわからん。
「福袋」は、行方不明のろくでもない兄を、その交際相手とともに探す話。いい物も悪い物もいろいろ入っている福袋を人生に例えて。全くその通りだな〜としみじみ。