「鼓笛隊の襲来」三崎亜記。

鼓笛隊の襲来

鼓笛隊の襲来

短編集。どれも荒唐無稽な話で、三崎さんらしい味があります。
「鼓笛隊の襲来」
台風を鼓笛隊に置き換え。なんてシュール。自然に抗うことなくともに生きることが大事なのだな。
「彼女の痕跡展」
彼女を失った喪失感はあるのに、「彼女」の記憶はない……。人の記憶が薄れ失われていく不思議。
「覆面社員」
労働者が覆面をかぶる権利ってなんですか?って感じだが、全く別な人間として生きる権利のこと。ちょっと素敵だ。
「象さんすべり台のある街」
本物の象さんが公園にいるわけで。最後は切ない。
「突起型選択装置」
体にボタンがついている人がいて、そのボタンが何のためにあるのかわからなくって…。ボタンがあれば押してみたくなる、人の心理と差別について。
「『欠陥』住宅」
友人がマイホームから出られらくなった……。同じ窓から眺めた風景はだれでも同じなのか、という疑問。
「遠距離・恋愛」
これが一番のお気に入りかも。ありえない設定なのに、ごく当たり前のように書いてしまう見事さ。
地上と浮遊都市間の遠距離恋愛。巫女の少女の健気さが泣けた。
「校庭」
見ているはずなのに見えていない、ってこと、あるある!
「同じ夜空を見上げて」
走っていた電車が消えた事故から5年、一年に一度消えた電車と会う機会がある……なんて切ない。