「宿屋めぐり」町田康。

宿屋めぐり

宿屋めぐり

主人公鋤名彦名は、主に命ぜられ名刀を大権現様に奉納する旅の途中、白いくにゅくにゅに飲み込まれ、贋の世界へ入ってしまう。そこは嘘、偽りに満ちていて道中は過酷だったが、彦名自身は真実真正に生きようと決意、当初の目的を果たして本当の世界へ戻ろうとする、冒険物語。
…という要約は、読み終わってしまった今となっては、まあ間違いなんだけれども(汗)。読み始めはそんな話かな〜と思っていた。


町田作品を読んだのは久しぶり、『告白』以来。『告白』はコミュニケーションの困難さを描いた作品だった、と思う。
今回は、ひとことで言えば「欺瞞に満ちた世界でどう生きるか」を問うているのだろうなあ。
嘘偽り、と世間に対して憤っている彦名自身も同列であることに内心では気付きながら、すり替え、人のせいにして「自分は正しく生きている」と思い込もうとする憐れな彦名。
彦名があれやこれややらかす度に、いたたまれなくなって何度も本を閉じてしまった。彦名が我が身のように感じられてしょうがなかった。
こんなことじゃあいかん、正しく生きよう、なんてことは私でも日々思っているわけですよ。
それで次の日には正しい人間になっているかっていうと、全然そんな風にはなっておらず、また性懲りもなく同じようなことになり再び反省したり、、、。まあ、生きている限り永遠と続くんだろう、それが人生さ。。。と思ってしまってはダメだダメだ。ダメなんでしょ?
…と、感想書こうとすると、彦名と同様の言い訳の羅列になっちゃうのだった。そう、この本のほとんどは言い訳でできている。
そんなこんなの後、最後の最後で主と再会して…衝撃的な結末であった。


人生とは、魂とは、自分とはなんなのか、を考えるきっかけになるかもしれないよい作品だった。



…けど、私はこれから先も適当にやって、楽して生きようとするんだろうなあ、きっと。


…ダメじゃん。