「水の時計」初野晴。

水の時計 (角川文庫)

水の時計 (角川文庫)

2002年の横溝正史ミステリ大賞受賞作だそうです。この方の作品が面白い、と書かれてるのをあちらこちらで見かけたので読んでみました。


面白かったですけど、なんかモヤモヤしました。


どこがミステリ?でしたが、社会派の優れた作品と思いました。月明かりに水が揺らめくようなファンタジックな面も。

冒頭に「幸福の王子」が引用されており、それを下敷きにしたストーリー。人々に分け与えるのは、金銀宝石ではなく、臓器。王子やツバメ役の人物が登場し、ラストは…。
幸福の王子」は、無償の愛の美しさ(という解釈が一般的ですか?)テーマだと思いますが、私はやはりツバメのことを思ってしまうわけで。王子は自己満足して幸せだったでしょうが、付き合って死んだツバメさんは幸せだったのでしょうか?
で、「水の時計」だけれども。
王子・ツバメ役の少年少女たちが幸せになったのか、というと「なんだかなぁ」という感じにしか思えない。
臓器移植のことは自分の身に起こらないと心情は理解できないと思うので、こちらは保留。医学的な部分で「こういうことって本当にあるの?」と感じました。謎。

ああ、なんか色々モヤモヤ。これは一種の問題提起だったのかも。ただはっきり言えるのは、子どもが理不尽なことに遭遇する世の中はおかしいってことかな。