「憂鬱なハスビーン」朝比奈あすか。

憂鬱なハスビーン

憂鬱なハスビーン

第49回群像新人文学賞受賞作。気が滅入る話。共感はできなかったけれども気持ちはわかるし面白かった。
有名塾で戦い中学受験を勝ち抜き、やがて東大を卒業、一流企業に就職し重要な仕事を任されたものの…。今は専業主婦、夫も東大卒で弁護士、高級マンション住まい。なのに全然満たされない、鬱屈した日々。
ハスビーンは「Has been」で「かつては何者かだったけれどもう終わってしまった人」の意だそうで。主人公の千本松凛子はずっとエリートコースで今でも申し分の無い暮らし…と思うのは傍から見ているからなのだろうなあ。本人は挫折から立ち直れず、かといって他の幸せを見つけようともしない。プライドが高くて不平不満ばかり。他人のせいにスルナヨ,オイ。
明るい未来が見える結末でもない話のどこが面白いのかっていうと、不器用で変わりたくても変われずに延々と不満をいい続けているのが、どこか庶民的な感じがして良かったのかも。生き辛さがヒシヒシと伝わってくる…それはエリートでなくとも同じだもんね。凛子には「こんなことではいけない」と今後は前向きに生きて欲しいし、私も我が身を振り返るべきなのではないかと思われ。エヘヘ。
それにしても、夫の人がすんごくいい人だ。奥さんのどこに惚れてるのか謎。