「リリエンタールの末裔」上田早夕里。

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

短編集。4つのお話。SF。
表題作は「華竜の宮」と同一世界で、空にあこがれる少数民族の子が、パイロットになるべく都会に出てきて、苦難の末夢をかなえるお話。ただひたすら「飛びたい」と思う気持ちがあれば、艱難辛苦も乗り越えられる希望に満ちたストーリーだった。しかしあの世界だということが無常だ。
「マグネフィオ」は損傷した脳の機能を機械で補った時の不思議、「ナイト・ブルーの記録」は無人潜水艇のシステムの教育のため機械と同期したパイロットに起こった不思議、のお話で、二つは似かよったテーマなのかな。なるほど、といった感想。
「幻のクロノメーター」はジョン・ハリソンという実在の人物の生き様をSF風味に加工したお話。ハリソンさんの作る時計の魅力がよく伝わってきて、SF要素がなくともよかったんじゃないか、と思うくらい面白く読めた。その道を究めた人物に対する敬意がすばらしかった。