猛スピードで母は (文春文庫)長嶋有「猛スピードで母は」追加。猛スピードでワーゲンを抜き去るラストシーンがカッコいいぜ。同時収録「サイドカーに犬」は第92回文學界新人賞受賞作。だらしない父に愛想尽かした母が家出した一夏の話。母の居ぬ間に父の愛人がやってきて幼い姉弟のために晩御飯を作ってくれるのだが、その愛人洋子さんが又カッコいいんだ。「留守中に勝手に上がりこんで」と激怒する母の気持ちもわからぬでもないが、子供を置いて家出する母親なんて、(事情があったのかもしれないが)イマイチ同情できないし、いい加減な父にゾッコン惚れて子供の面倒を見てくれて、子供に媚びる事も無いそのさっぱりした態度が◎。
どちらの作品にしても、主人公の微妙な心理の描写が巧み。「パラレル」もよかったし、これから入れ込んでみようかな。

書店のレヴュー

第126回芥川賞受賞作。結婚に失敗して故郷の北海道に戻った母と小学6年生の慎。ベタベタしてない親子関係が爽やか。母親は、猛スピードで突っ走るかのごとく逞しそうに見えていて実は弱みもある。そして主人公の慎君は主体性が無くって、いつも周囲との距離感ばかり気にしているような男の子。が。ある時母の弱いところに気づいてしまうわけで、最後の方の「平気だよ」の科白に拍手を送りたくなりました。こうしてかっこいい男に成長するんだろうな。同時収録「サイドカーに犬」。こちらに登場する洋子さんもかっこいいぞ。05/04/05★★★★