遠い音 (新潮クレスト・ブックス) フランシス・イタニ「遠い音」。
長いことかかってやっと読み終わりました。さらっと読み流せるような話ではないので、この多忙な時期に何日もかけたのが、かえってよかったかもしれない。
それにしても、最近読む海外作品は、時代背景が似通っているような気が。「戦場の〜」第二次大戦だったけど。
そのなかでも、戦争描写は断トツに克明。耳の聞こえない少女の話というよりも、戦争小説といえる程。「映画化されても私は見ない」ぐらい悲惨で。ジム、無事で帰ってきてよかった。
あと、挙国一致の戦時下にあって、戦地に行くことのできない耳の聞こえない人(友人のコリン)や、虚弱体質だったり(兄のバーナード)など、見た目健康そうな人たちが「臆病者!」と罵られる場面に、ずいぶんと驚かされてしまった。人間っていったい。。。

書店のレヴュー

5歳の時、猩紅熱で聴覚を失った少女グローニア。音のない世界に生きる彼女の半生を描いた長編小説。舞台は1902年から1919年のカナダ。◆前半は耳が聞こえなくなったグローニアがどのようにして言葉を獲得していったかが書かれている。祖母であるマモは愛情深く言葉を教え、姉のトレスは音のある世界への架け橋となる。一方母親は再び聴覚が戻ることを願い神に祈ることを止めず、結果的に聾学校での専門的な教育を受ける機会が遅れてしまう。その後聾学校での寄宿生活を経て、音楽好きの青年ジムと出会い結婚、つかの間の新婚生活の後、ジムは戦地へと旅立つ。中盤からは静かな世界でジムを待つグローニアと、暴力的な音に包まれ過酷な兵士生活を送るジムの両方から第一次大戦の悲惨さが語られていく。◆健常者が想像する音のない世界と、聴覚を持たない人が想像する音のある世界。二つの世界をジムとグローニアが互いに説明し合い、わかり合おうとするシーンが印象的。05/10/26★★★★