絲山秋子「沖で待つ」

沖で待つ

沖で待つ

芥川受賞作品の表題作と、もちょっと短めの「勤労感謝の日」。「勤労〜」の方が最初のページでしたが。
沖で待つ」は、もう誰もがあちらこちらで聞いただろう、そういう話。恋人でもなく友人でもなく、「同僚」で、本当に対等な関係の不思議。しかもこの主人公は立派な「社会人」だ。そんな気がしました。
で、もう一つの「勤労感謝の日」。こちらの方が私は好き。会社の上司も、見合いの相手も具合悪くなるくらい酷い奴。仕事に目標も何もなかった。ただ「他の女とは違う」とは思っていた・・・。「沖で待つ」のように、職場に恵まれて、上司も同僚もいい人にめぐり合えて、という待遇のいい設定とは正反対。結構苦しい。でも最後に、「明日は『それでだめなら、その時さ』って言えるかな。」みたいな科白。ううっ、全くその通りだ、励まされました。ありがとう。

書店のレヴュー

「それでだめだったら、そのときさ」◆「勤労感謝の日」主人公は36歳無職。父親の葬式で暴言を吐いた上司に殴りかかり、職を失った。失業保険もまもなく切れるころ、恩人に見合いを勧められ、やってきた男は「会社大好き人間」で大企業の社員であることを鼻にかけたいやな奴。不安を抱えながら明日に希望を見つけようとする、読後感爽やか。◆「沖で待つ芥川賞受賞作品。総合職の女性と男性同僚との、男女であることを抜きにした関係。◆2作品に登場する男たちが好対照。後者のような職場にめぐり合えた女性は幸運なのかな。06/02/25★★★★