舞城王太郎「暗闇の中で子供」。

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

ストーリーは、「煙か〜」の続きで、あの二郎かもしれない「ジャワクトラ神」がらみの殺人事件など諸々が起こって、三郎は翻弄され、四郎がテキパキ解決する流れ。
なんだけれど、第2章は唐突に、物語とは一体何か、で始まり、

「ある種の真実は、嘘でしか語れないのだ。」

という。
その後、話は進むのだけれど、どうにもおかしい。辻褄が合わない個所がある。変だ?間違い?・・・かと思いつつも気にしないで読み続けると、最後の方に、

「物語に含まれる矛盾や齟齬というものは、どれくらいの許容範囲をもっているのだろう?」

とくる。むむむ、これは実験?しかも結末は曖昧模糊として選択制あるいは「好きにどうぞ」と締めくくっている。これは凄い発想だ。もちっと他の作品も読んでみませう。

書店のレヴュー

煙か土か食い物』の続編。主人公は作家の奈津川三郎。前作ではノンストップで四郎が走り回りチャッチャッチャッと事件を解決するスピード感が快感だったが、本作の三郎は思考する度に立ち止まる(代わりに四郎がチャッチャしてるが)。まだ終わっていなかったあの事件のその後、のお話。暴力シーンは前作を上回るかも。◆三郎は作家故に、読み手を挑発するが如く「小説とは」という命題を冒頭から投げかけてくる。所詮小説は嘘であり、小説が嘘で真実を語ろうとするならば、読み手自身が真実を見つけなければいけない。齟齬や矛盾が散りばめられた作法は挑戦的と言えるのではないでしょうか。06/03/22★★★★