エリザベス・ギルバート「巡礼者たち」。

巡礼者たち (新潮文庫)

巡礼者たち (新潮文庫)

短編12作。どれもが非常に淡々としていて、冷静で丁寧な描写で、切なくて空しくなるお話。
読んだ直後はよくとも、明確な起承転結がない分、少し経つとすっかり忘れてしまう可能性大。
好きなのは「ブロンクス中央青果市場にて」。
市場で荷役人夫として長年働いてきたジミー・モラン。深刻な腰痛で、椎間板の手術を受け、医者が休養6ヶ月と診断した所を4ヶ月で切り上げた。その間、新しい車をただ同然で手に入れ、労働組合支部長に立候補することに決めた。腰痛は消えたし、前途洋洋と思われたのもつかの間・・・
結局、何もかも上手くいかないのだ。腰痛は再発するし、対立候補はマフィアくずれで恐ろしがって誰も逆らわない。自分の休養中に市場で殺人もあったらしい。子どもは6人で生活は苦しい。憧れの住宅街に引っ越せるあてもない。ああ、人生とは儘ならない。


次に読むのは、パ〜と明るい話がいいな〜、これはちょっとストレス溜まったかも。

書店のレヴュー

人生とは上手くいかない事が多いものだ。そんな上手くいかない人生の断片を集めた短篇集。◆この作品は、アメリカ各地を舞台に、不器用に生きる人たちの、不器用な瞬間を集めた短編12作。どれもが、ハッピーエンドでもなく、かといって悲劇という程でもなく、はっきり言ってしまえば、きちんとした結末があるでもない。なのに、不思議と心にしみてくる、やるせない思い。登場人物の経験する孤独や挫折や理不尽の壁が、普通の人の普通の人生として共感できたのだと思う。06/05/20★★★