姫野カオルコ「ハルカ・エイティ」。

ハルカ・エイティ

ハルカ・エイティ

ノンフィクションではないだろうけど、モデルが伯母、というのだから、ある程度は実話なんだろな。
昭和初期から現代に至るハルカの生きてきた「女の一生」。


戦前・戦中の話は、時代が混乱しているにもかかわらず、何故かほのぼのした雰囲気。幸運にも近親者に戦死者がおらず、空襲も難を逃れたせいもあるけれど、戦争があまりに身近に、普通に「そこにあった」からなのか。
戦後の話が、なかなかに面白い。恋愛体験無しに見合いして妻になり母になったハルカが、30過ぎて恋をするくだりは、今の世にあってでさえ、「まあ、これはありえんやろ」の感。あ、世間ではありなのかな?


そんな伸びやかなハルカの生き方に対して、妹時子(作者の母親)の暗黒な人生と来たら・・・
やっぱり人生、前向きに生きないとね。悪い方にばかり考えてると不幸が寄ってきちゃうのかも。

書店のレヴュー

第134回直木賞候補作。作者の伯母をモデルにした小説。80を過ぎてなお、背筋をシャンと伸ばして、スーツを着て、ホテルのラウンジで一人でコーヒーを飲む伯母ハルカ。そのラッキーな一生を描いた物語。◆戦前・戦中・戦後、激しい時代の変化に翻弄されることなく、その時代に身軽に合わせ、身の丈にあった適材適所をモットーにしたポジティブな生き方が、カッコイイのだ。舅姑・夫・友人その他周りの人々に好人物ばかりなのも、ハルカの性格が呼び込んだのかもしれないけれど、やはりラッキーだったのだろう。夫婦のあり方についても、随所に考えさせられる個所が。男とは、女とは、夫婦とは。06/07/03★★★