「風が強く吹いている」三浦しをん。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

今、陸上物が流行っているらしい。新聞に載ってた。
他の作品は未読なんだけど、私は最近「DIVE!!」を読み終えたばかりなので、スポーツ小説づいてる気がしないでもない。
思ったのは「スポ根もいいよね」ってこと。


さて、しをんちゃんの「風が〜」ですが、素人ばかりで箱根駅伝を目指すお話。
多分どんなに練習したところで、素人が一年弱で箱根駅伝に出るなんて不可能だと思うんだけど、そんな無茶な設定でも全然気にならないくらい楽しくって、感動をくれた作品でした。ありがとう、しをんちゃん。
最近、とんと「とことんやってみる」ことなんてなくなった、というか、今までの人生でもなかった気がする私ですが、
この本は、「好きならやっていいんだ」と教えてくれました。そうなんだね。


さて、備忘録として、愛すべき登場人物を書いておくと、
清瀬灰二(通称ハイジ)
実質的監督、主将。陸上経験者。高校時代に故障。人に言われるまま走ってきた事に疑問を感じ、純粋に走ることの意味を追求しようとした人。他のメンバーを半ば脅迫して引きずりこんで箱根を目指す。「君たちに頂上をみせてやる」
蔵原走(かける)
主人公。前途有望なランナーだったが、高校生の時、スパルタ監督に反発して暴力事件を起こしてしまい、以来人目を避けながら一人で走ってきた人。
ハイジに見つけられ、安い家賃に誘われてメンバーに。実力があるだけに、他の素人メンバーにイライラする事多々あり。
ジョータとジョージ
そっくりな双子。明るい。モテたいくせに恋に鈍感。
いつも「双子」とひと括りにされていたけど(自分たちも精神的には二人でひとり、と思っていたのかも)、最後にはそれぞれの思いが語られる。
ニコチャン
生活&学費のためにアルバイトで忙しい。浪人した上留年で5年目の25歳。
昔、陸上をやっていた事があるが、今はヘビースモーカーで太り気味。体格が陸上選手向きではなく断念した事でいまだモヤモヤしていたが、決着をつける。
ユキ
司法試験に合格、何事もキッチリやる人。音楽好き。母親が再婚して年の離れた妹がいる。母親に楽させたい一心で頑張ってきたのに、再婚されて身の置き場がなくて困っている。
ムサ
黒人の国費留学生。真面目。「黒人が速いというのは偏見です。」でもホントに速かったよ。
神童
北海道の田舎から出てきた地味な人。地味にコツコツ。陰ながら清瀬の雑用を引き受けるいい人。本選では大変な事に。こんなきつい目にあわせるなんてひどいよ。ウルウル。
キング
クイズおたく。小心者。仲間はずれにされないたくないので参加したようなもの。それまでは八方美人で広く浅い人付き合いばかりだったけど、メンバーと濃い付き合いができた事に感動した人。ちょっと共感。
王子
漫画オタ。顔はきれい。運動能力が低すぎ。でも誰も彼を責めたりしない。


個人的にユキと神童と王子が好みかな。
本選で彼らが走っている時、泣けました。
でももちろんみんな大好きだ。
来年の正月は、箱根駅伝を見よう!

書店のレヴュー

たった一年で、しかも素人ばかりで箱根駅伝を目指す大学生の青春物語!◆箱根駅伝は、ど素人が頑張ったからってそう簡単に出場できるものではないことはわかっている。それでも、ちっとも安易な話だとは思わなかったし、登場人物たちには声援を送り、共に箱根へ行きたいと思った。読むものを熱くさせる、そんな作品です。◆リーダーのハイジ、エースの走(かける)、その他漫画オタク・司法試験合格者・陽気な双子・ヘビースモーカーなどなど、10人のメンバー全員がみな個性的で愛おしく感じたし、10人で走ることで、それぞれに自分の大事なものを見つけていく箱根駅伝の場面は手に汗握りました。走り終えた後の清々しさといったら!これは久々の超オススメ作品です。06/11/27 ★★★★