「八日目の蝉」角田光代。

八日目の蝉

八日目の蝉

これはすごい。
1章は、不倫相手の本妻が産んだ子を誘拐し、逃亡する希和子の記録。
立ち退き寸前の家に住む老婆に助けられ、その後宗教団体「エンゼルホーム」の施設、小豆島の素麺屋、と転々としながらも、希和子は薫を慈しんで育てる。
希和子のやっている事は犯罪とわかっていても、ついつい応援したくなってしまった。
2章は、実父母の元に返った恵理奈(薫)の、その後の人生。
実父母は空白の期間を埋められない。両親の浮気が元の事件なため、マスコミに叩かれ、世間では注目の的、引越しを繰り返しても逃れられない。やがて恵理奈は希和子と同じ道をたどってしまいそうになって…
こんな目にあったのは、なぜ自分なのか。恵理奈の自分探しの旅。


描写が丁寧。希和子が逃避行の際に出会った人々のドラマも読まされましたし。
赦しがあったわけでもないのに、最後が爽やかなのもいいね。
ま、恨むべきは不倫だ。不倫は止めようよ。

書店のレヴュー

普通のOLだった希和子は不倫の末堕胎したが、本妻が堕胎した子の出産予定日と同時期に女の子を産んでいたことを知り、思い余ってその子を誘拐してしまう…。◆角田さん初のサスペンスは読み応えがあった。前半は乳児を誘拐した希和子の3年半に渡る逃避行の様子。後半は誘拐された子恵理奈(薫)のその後の人生。◆テーマは「家族」だろうか。希和子の薫への愛は本物でもしょせん間違っている。恵理奈の家庭は事件後マスコミや世間の目にさらされ破綻状態に陥る。その他にもたくさんの親子が登場するが、どれも問題を抱えている。が、実際問題を抱えたのは親であり、子どもはそういう親を選んで生まれてきたわけではないのだ。なぜ自分だったのか。希和子との思い出の地を訪ねた恵理奈がたどり着いたラストは爽やかだ。07/05/28 ★★★★