「ダーティ・ワーク」絲山秋子。

ダーティ・ワーク

ダーティ・ワーク

いい話だった。
短篇集だけどつながっている、というか、最初の話の主人公熊井の変化に集結されていく感じ。最後の話の主人公が再び熊井で、幸せの兆しがみえて終わる。
ギタリストの熊井はベーシストの坂間と「どちらが長く禁煙できるか」の賭けに負けて健康診断を受ける事に。結果は「要再検査」。「死」を身近に感じて思い出すのは、喧嘩別れしたTTのこと。TTは今何をしているのだろうか…
で、その後、話は一見無関係に思える人たちが入れ替わり立ち替わり主役になり進むんだけど、「あ、これはあの時のあの人」というのが次第にわかってくる。
あまりぱっとしない人たちばかりが登場するのは、絲山さんの作品ではいつもの事だけれど、どの話も終わり方がちょっといい感じなのがよかった。どの「あの人」たちにも、それぞれのその後の人生があるのだな〜。

書店のレヴュー

「めちゃくちゃ汚れるけど、汚い仕事じゃないんだ。」◆絲山さん初の短編集だそうですが、読んでみると短編という気がしない。7つの話は主人公や文体も異なっていてバラバラの話だったのが、いつの間にかつながっていて、最後まで読んだら最初から読み返したくなる。どの話も主人公は行き詰まり苛立っているのが、最後は気の利いた終わり方で、センスがとてもいい。◆上手くいかないことが続いても、何かのきっかけで変わっていくときがある。そのきっかけは何年も会っていない友達からの連絡かもしれない。そんな希望を持たせてくれるちょっといい話。07/05/30★★★★