「万寿子さんの庭」黒野伸一。

万寿子さんの庭

万寿子さんの庭

作者の黒野さんは第1回キララ文学大賞受賞者。キララという雑誌があるんですね。知らなんだ。
さて、この本は年の離れた女性二人の友情の話。「年の離れた」って50歳以上ですから。自分の祖母ぐらいでしょうか。
大変面白うございました。が、終盤の展開が不満。
以下ネタばれを含むので白字。
京子は、万寿子さんとの付き合いを経て、自分の父親との関係を修復できることになったわけで。
なのに、万寿子さんの娘さんは、万寿子さんの痴ほうが進み会話も困難になってからしか再会できなかった。
そうしてしまったのは京子なのだ。
もちろん、娘さんに連絡するのを万寿子さんが望んでいなかったから、という理由はあるけれども。
もっと早い段階で娘さんに連絡していれば、元気な万寿子さんと暮らせたはずで、その機会を京子は奪ってしまった。
終盤の京子の行動は、正しいとは思えない。どこかに相談するとかすべきだったのであって、自分で全部引き受けたのは自己満足に過ぎないんじゃなかろうか。

京子がその事を多少なりとも悔やんでくれれば、やりきれなさが残らなかったのにな。

書店のレヴュー

就職を機に引っ越した京子20歳。その新しいアパートの隣に住んでいる老女から謂れのない嫌がらせを受けるようになって戸惑うが…。50歳以上年の離れた万寿子さんと京子の友情物語。◆昔ながらの近所付き合いが廃れ、隣に住む人の顔も知らないのが普通の昨今。でも当たり障りなくお隣さんとは付き合いたいと思っている人も多いかもしれない。としても近所のお年寄りと知り合いになるなんて機会は滅多にないでしょう。京子は、偏屈と噂されるおばあさんに勇気を出して朝の挨拶したばっかりに嫌がらせを受ける事になってしまうのですが、いつのまにやら親友に。◆湯本香樹実「夏の庭」の大人女版。仕事でもプライベートでもいまいち充実感が得られない、コンプレックスの塊だった京子の心が解きほぐされていく様子がよかった。終盤の展開にちょっと不満かも。07/07/01★★★★