「渋谷に里帰り」山本幸久。

渋谷に里帰り

渋谷に里帰り

食品卸会社勤務の峰崎稔は32歳、感情表現が乏しいと周囲の人から言われている。いまいち覇気がなくってやる気がなさそうな彼の心の拠り所は、隣のビルで野球の素振りをする女性とのわずかなコミュニケーション。
そんな彼が、営業成績№.1で寿退社が決まっている坂岡女史の後任になることが決まり、彼女に付いて得意先回りをすることに。しかも営業区域は「鬼門」の渋谷だ。


やりたくてやってる仕事じゃない、渋谷は昔を思い出すからイヤ。なんとなくいろんなことから逃げ回っていた主人公が、緩やかに「頑張ろう」という気になっていくストーリー。
峰崎の気持ちの動きが、なかなかいいね。人の必死さにちょっとずつ心動かされていって、最後には「負けるものか」と胸のうちで繰り返すまでに至るんだけど、その流れが全然無理がない。
ほんのちょっとのきっかけと勢いがあれば、自分を変えられる、ってことかな。