「こうふく あかの」西加奈子。

こうふく あかの

こうふく あかの

「こうふく みどりの」と対になる作品。共通点は「道」。


2007年。結婚して12年、サラリーマンの神保靖男は妻から妊娠を告げられる。が、自分の子ではない。妻はその子を産むという……。


2039年。衰退の一途をたどるプロレス界で、無敵を誇る男がいた。アムンゼン・スコット48歳。彼はいつも命懸けてリングに上がる。


2つの話が交互に描かれ、最後にピタッとつながる、のは見事なんだけど。
靖男の話が、笑っていいのか、悲しいのか、複雑な気持ちになった。「普通」に物分りのいい夫や上司でありたいと願っていた靖男に降りかかった「普通でない」出来事……これは一体どう咀嚼しろと?この本の結末は、アントニオ猪木に並々ならぬ愛情を注ぐ作者の思い全開だけれども、そこだけ突然ファンタジーっぽくなって、現実味がない感じ。