「星のひと」水森サトリ。

星のひと

星のひと

「でかい月だな」に続く2作目。今度は「星」。天体関係が好きなんだね、水森さん。
4つの短編の連作で、語り手がそれぞれ変わっていくのですが、その中心にいるのは槙野草太君15歳中学3年生。誕生時父母が学生であったため誰からも望まれなかった(除く父)存在ではあったけれども、その後すくすくと成長して立派な少年になった人。見た目がよくスポーツもできて明るくて思いやりがあって、クラスの人気者。そんな彼の家に隕石が落ち、ますます注目度は上がり…。
互いに思いあっているのに何故かすれ違ってしまう悲しさがあり、それでも引き合う絆の力強さを感じる作品でした。
ラストがなかなかに美しい。
以下メモ。
『ルナ』
自分の居場所を見出せないで悩む少女はるきが主人公。自分は別の世界の住人かも、とひそかに思っている。草太君の同級生。
思春期特有の悶々とした鬱屈の中にいるはるきの行動がものすごくイタイのです。草太君に謂われなき嫉妬の念を持って、つい対抗して「UFOを呼べる!」と口走ってしまい、おいおいどうするんだよ〜?と思いましたら、なかなかよい結末に。これは「ルナだけに…」と言えるな。まあ、みんな悩んで大きくなるのさ。
この後からはるきはツンデレ少女となり、とても可愛らしいくってよいです。
『夏空オリオン』
家族のために必死に働く草一郎さんの話。草太君のお父さん。TVのヒーロー「宇宙戦士ファインティングマン」に憧れる人。
この草一郎さんが、全登場人物の中で一番異星人かも。人間誰しもがするような損得勘定や嫉妬がない大変正しい人なのに、それゆえに他者の気持ちが読めない困った人なのだ。
周りの人全てを守ろうとして自滅していく姿は哀れだし、ラストもこれでよかったんだかどうか正直わからないんだけど、、、いいのかな?そばにいる草太君が健気でウルウル。
『流れ星はぐれ星』
草一郎さんの実家の隣に住んでいた耕平君が主人公。昔修羅場で「みんな人殺し」発言をして草太君の命を救った人物。今はなんとニューハーフのビビアン。
男運がないビビアンさん、初恋の人草一郎さんへの思いを断ち切って新しく生まれ変わろうとするも、草一郎さんの人並み外れた人の良さによって撃沈。
笑えるストーリー。最後に登場する沢田さんが謎。最後まで謎。宇宙人?
『惑星軌道』
不良の高宮君と草太君の友情物語。優等生で人気者の草太君にも辛い背景があることを知り見直す高宮君でした。
太陽の子草太君に誰もが引き寄せられてくるラストシーンが感動的。こういう星の下に生まれてくる人間もいるのだな〜と思ったのだった。