「厭魅の如き憑くもの」三津田信三。

厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)

厭魅の如き憑くもの (ミステリー・リーグ)

「首無の如き祟るもの」が話題になったときに“せっかくなら一作目から”と思いつつ幾年月。やっと読みました、第一作目。期待通りの面白さだった!★5
時代はおそらく昭和30年代、舞台は西日本のどこか山間の閉鎖的な僻村「神々櫛村(かがぐしむら)」。ここで起こった連続殺人事件の謎を、怪奇小説家の刀城言耶(とうじょうげんや)が解くストーリー。
ミステリーに民俗学をプラスした感じで、主に憑物筋に関わる民間伝承のあれこれが満載。私的には好みの分野だったので、長い薀蓄も苦にならなかった。
それになんといっても怖い。尋常ではない恐ろしさだったな〜とんでもない何かが背後から迫ってくるその臨場感が上手いのだ。(そういう恐ろしいものに出会ったら決して直視してはいけないんだって。後の障りの大きさが違うらしい。ためになるなあ〜まあ、会うこともないだろうが。)
最後に関係者が一堂に会しての謎解きがあるのだが、そこで説が二転三転するのもちょっと変わった趣向で気に入った。刀城は探偵役ではあるけれども完璧ではなくて試行錯誤の上に正解にたどり着く。が、それすら本当に正解だったのかどうかは自信がない、というのが謙虚で奢っていなくて好感が持てた感じ。
それもこれもこの作品が「不思議なことは世の中にあるのだ」というスタンスだからなのね。京極堂が「この世に不思議なことなどない」と言っているのとは違う点だ。
難点は、地形や間取りが全然把握できなかった、語り手が複数いてなぜかいい場面でチェンジしてしまう(恐怖を倍化させてるのかな?)、など。でもどれも充分許容範囲で、最後まで飽くことなく読めた。是非是非続編も読みたいと思う。