「シグナル」関口尚。
- 作者: 関口尚
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2008/02/22
- メディア: 単行本
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恵介の父親はろくに働かず家族に暴言を吐き傷つける存在、しかし母親はそんなダメな父親でも見捨てることができず、ドロドロした関係のまま。
一方ルカは、過去の出来事により心に傷を負っていて、3年間映画館の外に出ることなく映写室に住んでいる。
恵介がルカの過去の真相に次第に近づいていく過程はちょっとミステリーっぽくもあったが、メインは傷心から立ち直って二人で歩いていこうとする青春再生物で、ラストは爽やかだった。映写技師の仕事にかけるひたむきさも伝わってきたし、これはなかなかよい作品。
未来がみえてきたところで終わるのは綺麗に余韻を残こす効果かもしれないが、二人が抱えている問題が解決していないことはやっぱりいささか不満。
主役の二人と同じくらい傷つける側の人間も印象に残ったなあ。他人を傷つけずにはいられない人間にも相応の事情があるのだ〜とただの読者たる第三者の私はついつい思ってしまった。リアルじゃそんな無責任なことを言ってはいけないんだが。