「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子。

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

美しい小説でした。リトル・アリョーヒン、伝説のチェスプレーヤーの奇跡。
主人公の少年の出生から始まり、チェスを覚え、やがてリトル・アリョーヒンと呼ばれるまで。アリョーヒンとは実在のチェスプレーヤーで、彼を模して作られたチェス指しからくり人形の名前がリトル・アリョーヒン。少年はその人形の中に入ってチェスを指し続けた人。

とにかく美しく静かで穏やか。悲しい場面もあったけれど静謐。
何といっても対局の場面が素晴らしい。
私はチェスのことは全然わからない。なのに、この作品の中で繰り広げられるチェスの一局一局、一手一手の見事さが頭の中を埋め尽くすように伝わってくる。この感じは「博士〜」を読んだときの感覚に似ている。これが小川さんの才能なんですね。