「霊降ろし」田山朔美。

霊降ろし

霊降ろし

表題作(たまおろし)と文學界新人賞受賞作「裏庭の穴」を収録。
『裏庭の穴』は、浮気をしていて帰って来ない夫、会話をしてくれない高校生の娘と暮らす主婦の話。壊れかけの家庭なのに心乱すことなく如才ない妻を続ける主人公がじわじわと怖い。ミニブタと思って飼いはじめた豚がどんどん大きくなっていき、一体何を食べているのか…これもぞっとする怖さ。ラストは幻想的だな〜と思ったけれど、豚を飼いはじめた時点で主人公は狂気の世界にいたのだ、と解釈すれば、全くホラーではなかった。
『霊降ろし』は、精神を病んだ母親のためにインチキ霊媒師の片棒を担ぐことになった女子高生が主人公。最初は招霊のフリをしていたのに、次第に本当の霊が降りてきて…
大人たちの大人気ない振る舞いに対して主人公は終始冷静、自分のなすべきことをきちんと考え、行動している。ラストは清々しい。