「いっぺんさん」朱川湊人。

いっぺんさん (ジョイ・ノベルス)

いっぺんさん (ジョイ・ノベルス)

なんでしょう、この帯は。「今まで読んだ小説で一番泣けた」っていうのは誇大広告じゃないかと思いますが…(笑)
表題作は確かに泣けましたが、他はホラー色が濃くて恐ろしく、泣ける話ではないのではないでしょうか?ま、手にとって貰うにはインパクトがあっていいとは思いますけど、読んでみたら期待はずれだったと言われかねないような気がして心配です。

都市伝説や伝承を取り入れた短編集。ノスタルジックでちょっと怖いお話が9こ。「花まんま」のような雰囲気。私の好みにピッタリで、大変面白かったです。
以下メモ。
『いっぺんさん』
たった一度必ず願いをかなえてくれる神様の「いっぺんさん」。小学生のうっちんの友達しーちゃんの父親は働かず家族に暴力を振るう日々。それでもしーちゃんは「将来白バイの警官になる」という夢が。どうしても叶えたくって山を越えていっぺんさんに頼みに行くのだが…。
これは泣けた…。いっぺんさん、ありがとう。本当にありがとう。
『コドモノクニ』
四季にあわせた4つの童話のトリビュート。ラストの太文字2行が…怖い!!
冬は「ゆきおんな」。失踪した母はかもしれないとゆきおんなに付いて行ってしまった和子。春は「いっすんぼうし」。出来心で万引きしてしまった隆志は母親に怒られるのが怖くて押入れに隠れたけれど…。夏は「くらげのおつかい」夏休みにおじいちゃんの家に来た純一は、海で見たことのない生き物を見つけていたずらしていたら…。秋は「かぐやひめ」。離婚した両親の母親の方と暮らしていたけれど、新しい父親に嫌気がさして元父親の家を訪ねた真理江だったけれど…。
『小さなふしぎ』
縁日で小鳥を使った占い屋をやっている中山さんと知り合った浩輔。ある日一番可愛がっていた小鳥のチュンスケが死んで…。
怖いけれど、いい話。
『逆井水』
放浪の旅をしていた男がたどり着いた村は、若い女と老女ばかり。そこで歓待を受け「飲むと元気が出る水」のおかげでハーレム状態。その水で一儲けしようと企んだ男だったが…。
え〜と欲かいちゃいけないってことで。
『蛇霊憑き』
私、蛇になったのよ…という妹を心配した姉だったけれど、その夜…。
蛇です。丸のみです。頭をつぶさないと死なないんですって。怖いですね。
『山から来るもの』
年末祖母の家を訪ねた阿佐美。眠れぬ夜に窓から見たものは、残飯をあさる怪しい人物。その正体は…。
最後のばーちゃんのセリフが、とんでもなくショックでした。しかたないですね(笑)←怖すぎて笑うしかないということで。
『磯幽霊』
海岸に出るという女の幽霊の話。これはこれで怖かったけれど、本当に怖いのは次の話で、
『磯幽霊・それから』
この本の中でNo.1の怖さ!単行本には収録されていない書下ろしだそうです。
『八十八姫』
仲がよかった弘明とハスミ。二人で河原で遊んでいると、上流から櫛が流れてきて…。
これは切なかった。