「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎。

南の子供が夜いくところ

南の子供が夜いくところ

今回の恒川さんはトロピカルだった。いつものどこか懐かしい和風テイストから一変しているのに加えて、不思議世界の雰囲気も違っているようで、「らしからぬ」というか、イメチェン?みたいな。これはこれで大変面白かった。
南国の島「トロンバス島」が舞台の短編集。ちょっとずつリンクしていて呪術師ユナが狂言回し的存在。日本人の家族が一家心中の危機をユナに救ってもらい、子ども「タカシ」がユナに連れられてトロンバス島にやってくるところから始まり始まり。
夢か幻かわからないような話の連続。南の島というだけで私にとっては非現実的で、神だか悪鬼だか得体の知れないものの存在すら真に存在している様な場所があっても不思議ではないような気がずっとしていた。幸せな結末ばかりではないけれども、世界は人間が理解していることだけが全てじゃないからそれもまたしかたのないこと、などと思ったり。
好きな話は、神様と共存する生活を送っていた島民たちが外世界(私たちの世界)に脅かされる「紫焔樹の島」(私的イメージはマクロスゼロ)、タカシに会うためバスに乗った父親が別世界に連れられてしまう「夜の果樹園」。