「魔法使いクラブ」青山七恵。

魔法使いクラブ

魔法使いクラブ

一人の少女の物語。小学4年生から高校3年生まで。
主人公、角来結仁(ゆに)は、橋の下に住むホームレス(多分)の老婆を見たとき彼女が魔女であると思い込み、幼馴染みの葵と史人と一緒に魔法使いになるべく練習する魔法使いクラブを作る。3人の願いが成就するまでやめることはゆるさない、という約束とともに。
救いがあるようなないような、漠然とした終わり方だったけど、読んだ人が独自にその先を想像すればいい、ということならば、私は「結仁は救われた」と思いたい。
第1章が小学4年、第2章が中学2年、第3章が高校3年、と結仁の成長を追っているのだけれど、どうにも彼女が成長しているふうには見えなくって、ドンドン悲しい展開になって辛かった。特に第3章は驚愕。
結仁は自分の幸せのための世間を望んでいるばかりで、自分自身が変わる努力を全くしていないように見受けられ、それが痛い。でもそれを責められない私もいる。「世間に期待はするけれど自分に勇気はないし、なかなか楽して思い通りには行かないよね」というのは私の反省すべき点であって、まだまだ子どもの結仁が楽しようとしているわけではないのだろうけど。家族の愛情も得られず、かといってそれを補うような友情も育まれるどころか壊れていく一方では何もかも諦めて絶望しても仕方がない、というか。
しかし、辛いときにヒーローのように窮地から救ってくれる人が現れるなど、それこそ愛あるフィクションの世界だけの話で夢物語なのよ!と思うわけで。
そんなこんなで、非常に現実的なお話で大変面白かった、と思いました。
弱弱しい史人が意外や意外、リアルに生きていて大好きだったよ。