「白い花と鳥たちの祈り」河原千恵子。

白い花と鳥たちの祈り

白い花と鳥たちの祈り

母親の再婚を機に引越し新しい父親と同居することになったあさぎ。突然他人の男性と暮らすことに戸惑いなかなか馴染めない、あげく入学したての私立中学でも友達関係が上手くいかず居場所を失って孤独を感じている。心の支えは郵便局窓口の中村さんで、彼の声を聞くことで寂しい気持ちを慰めていた。
一方、郵便局員の中村は、他の人が普通にこなせることをできない自分が「まとも」になるため、必死だった。。。


小説すばる新人賞受賞作品。とてもいい話だった。
小説に登場する中学生は、やけに物分りが良くって大人っぽかったりするけれど、この小説のお子達は等身大のように感じた。多感で繊細で、なんとも痛々しい。でも最後は爽やかでホッとするエンディング。
母親や父親、祖母など、本来なら彼女に安心を与えるべき身近の大人たち自身が不安を抱える危うい存在だったりするのが辛かった。特に母親と祖母の関係の歪みは、あさぎまで巻き込んでいて不快だった。
かたや郵便局員の中村。作中では明らかになっていないけれど、彼は多分高機能自閉症学習障害か。周囲から変人呼ばわりされ疎まれ、非常に傷ついていた。あさぎの話よりも彼のターンが数倍辛いストーリーだった。でもラストには救いが。
ローズクウォーツが重要アイテムで、意味は「真に自分を愛することを知る」。人との出会いが救いだっただけでなく、自分自身が気付いて理解することも大事なんだな。