「氷雨心中」乃南アサ。

氷雨心中 (新潮文庫)

氷雨心中 (新潮文庫)

職人の技と、怨念のサスペンスの組み合わせ、という趣向の短編集、6つのお話。


物づくりの工程を丹念に紹介する一方で、職人の個人的な思惑や感情を露にしていって、その果てに起こってしまった悲しい出来事を描く。何とも不思議な企画だなあ、と思いました。どの作品も男女関係の強い愛憎が絡み付いてきて怖ろしかったです。表題作は杜氏の話。酒造りに打ち込む青年の姿が生き生きとしてよかったのに、全く救いがなくいささかショック。能面師の話『泥眼』だけは真の匠といった感じ、極致に達した人だけが魅せる技でした。一番好きです。
仕事の魅力も十分に伝わってきました。が、話が話だけに(人死が多数)取材に協力した職人さんたちが気を悪くしたりしなかったか心配になりました。大きなお世話ですみません。


それから。
この本、図書館から借りてきたんですけど、何やらいい花の香りがするようなんですよー!前に借りた人が、「薫霊香」に触発されて仕込んだんでしょうか?私も何かやる?