「ぼくたちはきっとすごい大人になる」有吉玉青。

ぼくたちはきっとすごい大人になる

ぼくたちはきっとすごい大人になる

小学生高学年の子たちが主人公の短編集。子どもと大人の狭間のお年頃、複雑な思い。
鋭い目線が痛かった。子どもが主人公だからといって子ども向けではなく、忘れてしまったことを思い出させてくれるような、そんな話だった。子どもが読んでもいいけど、大人とは違ったことを感じ取るのかもしれない。
大人になると、素直な気持ちってなくなってしまうものなのかもね〜常識に囚われたり、相手の気持ちを考えすぎたりするあまり、気持ちも歪めてしまってるのかもしれない。それが大人になったってことなんだろけどさ。
表題作は印象的。それほど仲が良かったわけではないクラスメイトが突然亡くなって、「死」について思い巡らす男の子たちの話。大人たちや女の子たちの態度がとても普通なんだけれども(私だってこういうふうにするしかない気がする)、それが非常に形式的で心から悼んでいないように見えてしまう… ラストが毅然として子どもなのにすごいんだ〜カッコイイ。ずっとこのままでいられたらいいのに。 
それから「悪い友だち」。粗暴で誰の言うことも聞かない大河くんにあこがれる森下くんのお話。正義の味方は嘘くさくって楽な生き方…もっともだ(笑) 悪は誰にも支持されない孤高の存在…大河くんの最後がちょっと悲しかった。
「ママンの恋人」父と別居した母について海辺の別荘に暮らす愛(あも)。ママンには恋人がいて、そのおじさまに恋をするのだけれど…。
ラストの文章が強烈に心に残った。「ママンはどうしてパパを愛さずに、おじさまを愛して、私の人生を複雑にしたのか―――――。」